大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和33年(行)184号 判決 1960年4月06日

原告 清水祐雅 外九名

被告 国

訴訟代理人 岡本元夫 外三名

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等代理人は、「被告が昭和二〇年九月三〇日より同三二年一二月二五日までの間になした東洋拓殖株式会社の特殊清算中の不動産売却処分、従業員債務、一般債務、外地従業員債務の分配処分及び清算費用支払処分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因及び本案前の抗弁に対する反論として次のとおり陳述した。

(一)  東洋拓殖株式会社(以下東拓という。)は昭和二〇年九月三〇日被告によつて閉鎖機関に指定され、昭和二〇年一〇月二六日大蔵省共同省外三省令一号によつて業務を禁止されて解散し、執行機関、決議機関はいずれもその職能を奪われ、その所有資産、帳簿類はすべて閉鎖機関の管理するところとなつた。

(二)  昭和三二年一二月二五日、被告は閉鎖機関令にもとずいて東拓の所有する国内財産につきすべての整理清算を結了した旨公告した。しかして右清算事務執行中における主な財産の処分状況及び債務支払状況は次のとおりである。

(1)  財産処分状況

(イ)  東京都千代田区(処分当時麹町区)内幸町一丁目二番地の二所在東拓本館及びその敷地は昭和二一年一二月四日金三五、〇〇〇、〇〇〇円にて大蔵省に売却。

(ロ)  昭和二一年一一月二七日から同年一二月一一日までの間に四件の土地建物を売却。

(ハ)  換価資産総額金一一二、二五二、九七八円のうち金二二、三五六、〇〇八円を清算費用として支出。

(2)  債務支払状況

(イ)  担保付債務全額金五、〇六三、八八八円支払。

(ロ)  従業員債務金一一、四四二、三二三円支払。

(ハ)  普通債務金五五、五四八、〇三九円支払。

(ニ)  外地従業員債務金一、一七六、〇〇五円支払。

(三)  東拓の特殊清算手続における前項の財産処分、債務支払、清算費用支出は特殊清算人によつてなされたものであるが、特殊清算人は東拓の定款又は民商法による清算人ではなく、特別の法令にもとずく国家の機関であるから、その特殊清算事務は行政処分に外ならない。しかして右処分は次のように違法である。

(1)  閉鎖機関の特殊清算の執行は行政処分であるから、その費用は閉鎖機関令に特別の定めがない限り国費をもつて支弁すべきであるのに、前述のとおり東拓の特殊清算費用を東拓の財産から支出したのは違法である。

(2)  閉鎖機関は東拓の所有財産につき所有権を取得したものではないから、その所有権移転等の処分については東拓の決議機関を経べきであるのにこれを経ていないのは違法である。東拓は連合国最高司令官の要求にもとずいて制定された前記大蔵省外三省共同省令によつて閉鎖機関に指定された上業務執行を停止され、解散され、特殊清算に入つたのであるが、閉鎖機関に関する法令の立法趣旨は持株会社等の業務禁止、解散、清算を公正適確かつ迅速に実施させるためにその財産の保護、管理を特殊の手続で行わしめんとするものであるから、清算事務の執行については法令に特別の定めがない(昭和二一年二月六日大蔵省外二省共同省令一号第五条は「財産の管理及び処分をなす権利は委員長に専属する。」と規定されているが、閉鎖機関の特殊清算は持株会社等の所有資産の保護管理が主たる目的であるから右規定のいう処分とは所有権の移転の効果を生ずる処分を含まず、保護管理上最少限度に行う処分のみを指すものと解すべきである。)以上、民法商法等の原則に準拠すべきことは当然である。しかして商法は株式会社の清算手続中の財産処分について特に決議機関の決議を経べき旨の規定を置いていないが、実際の清算においては株主総会を召集し又は召集しなくとも株主の多数の同意を経て財産を処分するのが通常である。特殊清算人は国家機関としてその職務を果すものである以上通常の清算手続におけるよりもより慎重な手続をとることを要求されているものというべく、しかも閉鎖機関は昭和二三年に東拓の株主から一株につき未払金二五円を強制的に徴収していることからすれば株主と株主総会の存在を肯定していたことが明らかである。

(3)  閉鎖機関の債務支払の順序については閉鎖機関令に特別の規定がない限り一般私法の規定に従うべきであるのに、東拓の社債権者には全く支払をすることなく従業員債務の支払は別としても一般債務の支払を優先的にしているのは違法である。

(四)  東拓の前記不動産は国を代表する大蔵大臣と国の機関である閉鎖機関保管人委員長との間に売買契約がなされているが、これは民法第一〇八条に違反して無効である。(もつともその後特殊清算人については民法第一〇八条を適用しない旨の閉鎖機関令第一〇条の二の規定が追加されたが、東拓の所有不動産の処分は右規定の創設以前であるから当然に民法第一〇八条の適用がある。)

(五)  閉鎖機関令による特殊清算においては任意の清算の場合と異り特に債権者、株主の利益を保護すべき必要があるから同じ国家機関である大蔵大臣と特殊清算人が当該会社の決議機関に諮ることもなく債権者、株主等の意思を無視して不動産の売買契約等を行うことは違法というべきである。

(六)  原告等は次のとおり東拓の株式、社債等を有するので本訴により本件処分の取消を求めるにつき法律上の利害関係を有する。

(1)   原告清水祐雅 株式  一、〇〇〇株

(2)   同佐藤美代子 同   一、〇〇〇株

(3)   同高橋勇   同   二、六〇〇株

(4)   同清水静子  同   二、六〇〇株

(5)   同長谷川悦子 同   五、〇〇〇株

(6)   同長谷川忠  同  一〇、〇〇〇株

(7)   同久保田嘉圀 同     五〇〇株

(8)   同平松商会  同 二一七、九九四株

(9)   同佐野栄一  株式 三三、三〇〇株及び社債額面三、九六八、〇〇〇円

(10)  同高橋蹟子  株式 三〇、〇〇〇株及び社債額面二五三、〇〇〇円

(七)  被告は本件処分は行政処分ではないから本訴は不適法であると主張するが、被告の右主張は次のとおり不当である。

(1)  東拓の特殊清算は連合国最高司令官の要求にもとずいて被告が自ら特別の法令を制定し、その選任した特殊整理人又は特殊清算人をして清算事務を執行せしめたのであつて、東拓が私法上有する権利にもとずき自己の意思をもつて清算をなしたものではないから、右特殊清算事務の執行が行政処分であることは明らかである。仮りに特殊清算によつて私法上の清算事務と実質的には同じ効果を生ずるとしても行政処分であつてなおかつ私法的効果を生ずるものは他に例が少くないから特殊清算の執行が行政処分であることを否定する理由にはならない。

(2)  閉鎖機関は被告が連合国最高司令官の要請によつて設立したものであつてその業務執行者である特殊清算人は行政目的を達成するために閉鎖機関に指定された法人等の所有財産を管理処分するものに外ならない。換言すれば閉鎖機関の特殊清算事務は閉鎖機関に指定された会社等の自由な意思にもとずいてなされる清算事務ではなく、被告が当該会社等の意思を無視して制定した特別の法令にもとずいて権限を与えられた特殊清算人が清算事務を執行するのであるから、その執行行為は私法行為ではなく行政行為である。

(3)  昭和三二年一二月二五日に東拓の特殊清算結了を公告したのは特殊清算人石橋良吉であることは認めるが、同人は被告が閉鎖機関令にもとずいて任命した国家機関であるから法的には被告が公告したものに外ならない。

被告代理人は、本案前の申立として主文と同旨の判決を求め、その理由として「原告等が本訴において取消を求める東拓の不動産売却、従業員債務等の支払及び清算費用の支出は、閉鎖機関である東拓の特殊整理人(昭和一一年二月六日から同二二年五月一日までは閉鎖機関保管人委員会、同年五月一日から昭和二三年八月二一日までは閉鎖機関整理委員会)又は特殊清算人(昭和二三年八月二二日から同二七年三月三一日までは閉鎖機関整理委員会、同年四月一日以降は石橋良吉)が東拓の整理清算事務の執行として行つたものであつて(したがつて被告が行つたものではない。)、それは民法商法による一般の清算の場合に行われる財産の売却や債務の弁済等と同様私法上の行為であつて行政処分ではない。すなわち特殊整理人又は特殊清算人は主務大臣又は大蔵大臣によつて指名又は選任されるけれども、それは閉鎖機関に指定された会社その他の団体の機関であつて国家機関ではない。このことは昭和二〇年一一月二四日大蔵省外三省共同省令二号第五条、閉鎖機関令第一〇条の二の規定によつて明らかである。のみならず閉鎖機関の清算については閉鎖機関令(閉鎖機関令施行前は昭和二〇年一一月二四日大蔵省外三省共同省令二号によつて特殊整理が行われたがそれも閉鎖機関の解体清算が目的であつた。)によれば当該機関が民法商法又は特別法上の法人その他の団体であつても、これらの清算に関する規定の適用は排除され、また当該団体が債務超過の状態にあつても破産法の適用は除外され、すべてその清算手続は閉鎖機関令等の定めるところによつて行われ(閉鎖機関令第八条の二、第二二条)、同令等の定める清算の方式は通常の清算の場合と多少趣を異にしているが、しかしそれが清算であることは同令第一〇条の特殊清算人の職務権限に関する規定からしても明らかであり、所有財産の散逸防止と清算事務の迅速公平な処理を理念とする点においては一般の清算と別に変るところはない。ただ閉鎖機関の制度そのものが連合国軍の占領政策としての特別の要請にもとずいてできたものである関係上、その清算は一般の場合に比して可成り厳格性を基調とし、また大蔵大臣の選任する特殊清算人が大蔵大臣の監督のもとに清算を行うという点で一般の清算とは異つているが、その性質は一般の清算と変りはない。したがつてその整理清算事務の執行としてなされた本件各行為は一般の清算の場合におけると同様に単なる私法行為にすぎず、それは公権力の優越的な意思の発動としての面は少しも存しないのであるから、本訴は抗告訴訟の対象である行政処分の存在を欠き不適法である。」と陳述し、

本案の申立として「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、請求の原因に対する答弁及び被告の主張として次のとおり陳述した。

(一)  請求原因(一)記載の事実は認める。(但し正確にいうと東拓は昭和二〇年九月三〇日付連合国最高司令官の覚書によつて閉鎖を命ぜられたため事実上閉鎖し、昭和二〇年一〇月二六日大蔵省外三省共同省令一号によつて国内法上閉鎖措置が確定したものである。)同(二)記載の事実のうち被告が原告等主張の公告をしたこと(公告したのは閉鎖機関東拓の特殊清算人石橋良吉である。)、(2)(イ)の債務を支払つたこと(但し同額の税金の支払をしたことは認める。)を除き他の事実は認める。同(三)記載の事実のうち特殊整理人又は特殊清算人が原告等主張の不動産の処分をなすについて東拓の株主総会の決議を経なかつたこと、東拓の社債権者に支払をしなかつたことは認めるが、その余の事実及び主張は争う。

(二)  閉鎖機関と東拓とが同一のものであることは閉鎖機関令第一条によつて明らかである。したがつて東拓の財産は閉鎖機関に指定された後においてもいぜんとして所有権は東拓に存し、閉鎖機関に所有権が移転してあるいは閉鎖機関が処分権を有するということは観念上あり得ない。

(三)  特殊整理人又は特殊清算人は原告等主張のように国家機関ではなく閉鎖機関に指定された会社等の機関にすぎないことは本案前の申立の理由中に述べたとおりであるから、特殊整理人等が国家機関であることを前提とする原告等の主張はすべて不当である。

(四)  閉鎖機関の整理清算は閉鎖機関自身のために行うのであるからその費用は当該閉鎖機関が支出するのは当然であり、被告が支出すべき理由は存在しない。したがつて東拓の特殊清算費用が同会社の財産から支出されたことは何ら違法でない。

(五)  閉鎖機関東拓の特殊整理人又は特殊清算人による財産の処分、債務の支払等について東拓の株主総会の決議を経ていないことは何ら違法ではない。すなわち昭和二一年二月六日大蔵省外三省共同省令一号第五条は「閉鎖機関の業務及び財産の管理処分をなす権限は委員長に専属す。」と規定し、また昭和二三年八月二一日政令第二五一号による改正前の閉鎖機関令第四条第一項は「何人も指定日以後は閉鎖機関の財産上の権利義務に変更を生ずべき行為をすることができない。但し第一〇条第一項に規定する特殊整理人の職務の執行に係る行為についてはこの限りでない。」と規定し、さらに昭和二三年政令第二五一号による改正後の閉鎖機関令(以下現行閉鎖機関令という。)第一〇条第一項第二号は特殊清算人の職務権限として「財産の管理及び処分」を掲げ、かつ第一九条の二三において「閉鎖機関の株主総会、社員総会、社債権者総会その他これに準ずるものは第一九条の五第一項に規定する場合を除き他の法令、定款又は契約にかかわらずこれを招集するとことを要しない。」と定めているのであつて、法令の規定に多少の変遷はあるにしても閉鎖機関の財産の管理処分は特殊整理人又は特殊清算人の専権に属し、それについては株主総会の決議等を要しないものとされていた。

(六)  東拓の社債権者に支払をなさなかつたのは何ら違法でない。すなわち現行閉鎖機関令第一一条第一項は「閉鎖機関の債務の弁済その他債務を消滅させる行為については他の法令にかかわらずその方法、金額、時期及び順位について大蔵大臣の指示に従わなければならない。」と規定し、昭和二二年一一月一七日総理府庁外七省共同省令四号第四条に債務の弁済の順位が定められているが、それによると社債は最後順位になつている。したがつて社債権者に対する支払をすることなく従業員債務、普通債務の支払をしたのは正当である。

理由

(一)  原告等は本訴において閉鎖機関に指定された東洋拓殖株式会社の特殊清算中に特殊整理人又は特殊清算人によつてなされた同会社の所有不動産の売却、従業員債務、外地従業員債務一般債務の各支払、清算費用の支出等が行政処分であるとの前提に立つてその取消を求めているが、特殊整理人又は特殊清算人が特殊清算手続の執行としてなす閉鎖機関の財産の処分、債務の弁済等の行為が果して行政処分であるかどうかについて判断する。

(二)  閉鎖機関の制度はわが国の経済民主化を実現させようとする連合国軍の占領政策の一端として戦前から戦時中にかけてわが内外国策の遂行に特に協力する使命を持つていた法人その他の団体又は戦後間もなく設立された前者の後身若しくは変形の法人その他の団体に本邦内における業務を停止させ、さらにその財産の整理清算をするために設けられたものであることは公知の事実であるが、政府は右政策を実施するために一連の法令としてまず昭和二〇年一〇月二六日大蔵省外三省共同省令一号「昭和二〇年勅令五四二号に基く外地銀行、外国銀行及び特別戦時機関の閉鎖に関する省令」によつて連合国最高司令官から要求のあつた法人等(東拓もその中に含まれている。)を閉鎖機関に指定してその業務の執行、財産の処分等を禁止し、さらに昭和二〇年一一月二四日大蔵省外三省共同省令二号「昭和二〇年勅令第五四二号に基く外地銀行、外国銀行及び戦時特別機関の資産及び負債の整理に関する省令」、次いで昭和二一年二月六日大蔵省外二省共同省令一号「閉鎖機関保管人委員会等に関する省令」によつて閉鎖機関(右省令においては指定機関という。)の資産、負債の整理清算に関して定め、昭和二三年三月一〇日には勅令第七四号閉鎖機関令、同七五号閉鎖機関整理委員会令によつて前記法令を廃止し、閉鎖機関の範囲の拡大に対処して従前の規定を充実させたが、その後数次の改正を経て今日にいたつている。

(三)  前記省令又は勅令にもとずいて閉鎖機関に指定された法人等の団体(以下閉鎖機関という。)の清算手続については、前記法令はこれを直接民法ないし商法の規定によらしめることなくこれらの法令自体の定めるところにより政府の指名又は選任する特殊整理人又は特殊清算人をしてこれにあたらせることとし(昭和二〇年大蔵省外三省共同省令一号第二条第一項、昭和二一年大蔵省外二省共同省令一号第二条ないし第四条、閉鎖機関令第九条第一項、第二項)、そのために閉鎖機関の清算手続を通常の清算と区別して特殊整理又は特殊清算と呼んでいる。しかして右特殊整理人又は特殊清算人の権限に関し、昭和二〇年大蔵省外三省共同省令二号は、特殊整理人は主務大臣の監督のもとに指定機関の特殊整理を担当し、特殊整理の遂行上必要なる事項につき指定機関を代表すると指定し(同令第二条、第三条、第五条)昭和二一年大蔵省外二省共同省令一号は、閉鎖機関保管人委員会委員長(特殊整理人)は閉鎖機関の業務及び財産の管理及び処分をなす権限を専有すると規定し(同令第五条)さらに閉鎖機関令は閉鎖機関の特殊清算(昭和二三年八月二一日政令第二五一号による改正前においては特殊整理)は特殊清算人(前記改正前は特殊整理人)である閉鎖機関整理委員会又は大蔵大臣(前記改正前は主務大臣)の選任する者が執行し、現務の結了、財産の管理及び処分、債権の取立及び弁済等の職務を行うと規定している(同令第九条、第一〇条)。

(四)  閉鎖機関の特殊清算は前述のとおり主務大臣又は大蔵大臣によつて指名又は選任された特殊整理人又は特殊清算人によつて主務大臣又は大蔵大臣の監督のもとに執行され、しかもその執行は専ら前記法令の定めるところによるものであるから、通常の民法商法あるいは破産法にもとずく清算手続とはその外観を著しく異にし、公的色彩を強く帯びてはいるが、その実質においては前記法令の定める特殊整理人又は特殊清算人の職務内容に照らしても解散後の財産の整理を内容とする通常の法人等の清算手続と異るところはなく、結局において閉鎖機関については連合国軍の占領政策に即応し政府の指名又は選任した清算人によつて厳格な法規制のもとに清算を実施せしめんとするものに外ならない。すなわち特殊整理人又は特殊清算人は政府によつて指名又は選任はなされるが、その地位はあくまで閉鎖機関の機関たるに止る。したがつて特殊整理人又は特殊清算人が特殊清算(整理)の執行として行う閉鎖機関の財産の処分、債務の弁済、清算費用の支出等の行為は、その性質において民法、商法あるいは破産法の規定にもとずき清算人あるいは破産管財人が清算手続の執行として行う行為と何ら異るものではなく、それらの行為の本質は私法上の権利主体の機関がする私法上の行為に過ぎず、たとえ特殊整理人あるいは特殊清算人が公的な性格を持つているにしても行政権が優越的な地位において権力の発動としてなす行為としての性格を有しないものといわなければならない。

(五)  要するに原告が本訴において取消を求める閉鎖機関東拓の特殊整理人又は特殊清算人が特殊清算(整理)手続の執行としてなした財産の処分、債務の弁済等の行為は行政処分ではないと解せられるから、本訴は結局において抗告訴訟の対象である行政処分の存在を欠くものとして不適法というべきである。よつてこれを却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 浅沼武 菅野啓蔵 小中信幸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例